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Lycee Got His Gun thread Lycee


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The existence a synapse spin

(シナプスが紡ぐもの)


                                    by  peko


The existence a synapse spin

(シナプスが紡ぐもの)


庭園にいた。

子供の頃、姉のリゼと共によく戯れた緑の園だった。

見上げる窓には、よく母のリセ・フォン・フロイラインがいた。


リリ・フォン・フロイラインはそう思いながら、

庭園の芝生に横たわり青空を見上げた。

燦々と降り注ぐ太陽は変わりないのに、

時だけが無意味に過ぎて行くような気がしてならなかった。


リリはA4の音を声に出してみた。

文化圏経済になって世界が断絶していても、

世界中の赤ちゃんはA4である「ラ」で泣く。


私達は同じ人間として生まれ「ラ」から始まるのに、

生まれ落ちた途端、環境に左右されて行く。

様々な分岐点を経て、固有の世界観を持つものなのに、

先の大戦前の指導者は全てを人間と言うカテゴリーで判断しようとした。


リリはそんな事を思いながら、青空を流れて行く雲を見ていた。

どの人も今ここにある雲を見る事が出来るが、雲の形は変わって行く。

リリは色んな事を心の中で自問していたが、

いつも辿り着くのは、母の死が何であったかだ。


事故による死と言うのが政府と軍の共同見解であるが、

他の文化圏の刺客に殺害されたのかも知れないし、

政府と軍のどちらかに抹殺されたのかも知れない。

古来より知りすぎた者は消されてしまう。


この文化圏は穏やかな価値観で動いているが、

他の文化圏では存在を不透明にしないと命が危ないと言う。

体制批判などすれば人生はそこで終わってしまうと聞いた。


姉のリゼはシナプス・チルドレンとしてのイージス数値が、

若干、リリよりも高いのだが、

彼女は深く考える事を放棄している部分がある。

深く知ると命を落とす事を認識出来ているからだが、

リリはこの歪んだ世界を変えたいと言う気持ちがあった。


世界はA4で泣き始めるのだ。

A4の「ラ」で泣き始めるのに環境が相容れない人間を作ってしまう。

私達を同じ価値観の器に入れようとしたのが先の大戦の根底だと思う。

川の魚と海の魚を同じ水槽で生活させるのは許容出来る塩分濃度の時のみだ。


姉のリゼは時々言う。


国家とか文化圏の器では永遠に人は相容れない。

全てが違うと言う前提の元に隣の人の心の痛みを共用して行くしかない。

人と人が心を繋げ何処まで互いの許容範囲を知る事


今、文化圏政府と軍は対峙している。

リゼとリリは違う管理下に置かれてしまった。


凡庸な者は神の子リゼとか悪魔の子リリとか、

そうした二束三文の脚本を使いたがるものだが。

リゼもリリもリセの娘だ。


母であるリセ・フォン・フロイラインが願った事は、

二人が何事もなく老いる事だ。


リリは姉のリゼと違って、母の死の原因を解明したいと思っているが、

何事もなく生きる方が素晴らしいのかも知れない。

友と語らい孤独を打ち明け、心の棘を抜いて行く。


リリは庭園の芝生に横たわりながら、

太陽の光の注ぐ様に執着を溶かしていた。


今度、姉のリゼと何時会えるだろう。

その時は、母の見ていた庭園を歩き語らい、

歩き疲れたあと、名もない喫茶店でココアを飲みたい。


そして尋ねる。

もう恋をした?とか


                   終わり


フィクションであり、アゾンの設定ではありません。
音楽はフィリップ・グラスの「浜辺のアインシュタイン」 。


orange pekoe  (ペコ)

2016.1.20
http://orange-pekoe.blog.jp