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Lycee Got His Gun second Lycee


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The girl spoke to yesterday's green

(少女は昨日の緑に語りかけた)


                                    by  peko


リゼ・フォン・フロイラインはハイスクールに進んでいた。

自らがイージス・チルドレンである事も自覚していたし、

母のリセがミニブラックホールの育成実験の失敗で命を起こした事に、

疑念を抱いていたが、深く追求しようとは思わなかった。


彼女は太陽の子のように成長していた。

両親を失っていると言う影など微塵も感じさせなかった。

窓から零れる光は柔らかい少女の金髪を引き立てていた。

遠くで揚雲雀が啼いているが空の彼方だろう。


リゼはそうした風景の中で思った。

狼は橋を渡れば桃源郷があると呟くだろう。

子羊の彼女がその橋を渡らなくてはいけない義務はない。

只、妹のリリが過激になって行くのが怖かった。

このままぼんやりとした文化圏社会が続いて行っても不自由はない。


他の文化圏がどのように変化しているのかも知らないし、

母の作り上げたミニブラックホール・ゲートシステムが完成したからだ。

只、自分が特殊な子供であるが故に軍に所属しなければならなかった。


軍に所属しなければならないと言ってもハイスクールの合間に、

軍服を来てシナプス数値の測定をしなければいけない程度だった。

世界には自分達のような子供が何人か生まれている事は知っていたが、

平穏な世界が維持されていれば顔を合わす事なく一生を終えるだろう。


リリの心の中の闇がどうなっているか分からなかったが、

リゼは両親を失っていても屈託がなかった。

ハイスクールの友達もリゼの能力の事を知っていたが異端視しなかった。

寧ろ、リゼの回りの女の子達は彼女を信仰していた。


生きた少女を信仰すると言うのは可笑しな話だが、

リゼやリリは文化圏の最後の砦なのだ。

無論、そればかりではなく、リゼが人として優秀だったからだ。


リゼはそうした環境の中にいて常に思っている。

先の大戦以前の世界に戻る方法はないのかと。

だが、母の残した哲学的な日記を読み返す度、絵空事だと気付くのだった。


一度、蔓延してしまった災厄は人間の意識化に定着してしまう。

その業火の世界から脱却できない人間は過去に執着して生きるしかない。

運が悪かった事でさえ何かの所為にしてしまうのだ。


文化圏の誕生は宗教的・民族的な違和感がない者同士の秩序社会である。

大きな規制事項以外は互いの文化圏へ介入する事がない。

それ故に各文化圏は独自のガラパゴス進化を遂げているらしい。


リゼは先の対戦前の世界に戻す事は出来ないかと思うが、

水と油を同じ試験管に入れても交わる事はないとも思う。

それでもリゼは昨日の緑の世界を見てみたかった。


リゼは昨日の緑の世界を見てみたいと思う。

一方で妹のリリは異質なものをは排除するべきだと考えている。

母、リセ・ファン・フロイラインの死が謎に満ちているからだ。


文化圏共同政府はリリに母が他国のスパイに殺害されたと吹き込んでいる。

不思議な話だが政府系の情報と軍系の情報が全く違うのだ。

一昔前なら、シビリアン・コントロールが当たり前だったが、

常に他文化圏の脅威を警戒している今は同等の権限を持っている。


リゼは軍の管理下に置かれ、リリは政府の管理下に置かれていた。

姉妹であっても、顔を合わすのは能力計測の時だけだった。

リゼは姉妹の置かれた状況を悲しいと思っていたが、

それ以上にリリの暴走を止められるのは自分しかいないと認識していた。


政府は軍など要らない。

リリの能力で核を搭載したミサイルを発射できるのだ。


リゼは思う。

昨日の緑に憧れる。しかし今日を生きるのが先だと。


リゼも研究所の窓の外の美しい緑の庭を見詰めていた。

美しい太陽だけが世界に光を注いでいる様を。


                終わり


フィクションであり、アゾンの設定ではありません。


orange pekoe  (ペコ)

2016.1.17
http://orange-pekoe.blog.jp