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Waiting for Lycee


里瀬を待ちながら 3


             by peko


「ねえ。摩耶さん。何で里瀬さんは不利なのにいいんですか?」

「小花さん。世の中、空気を読む人ばかりでは駄目なの。

何処かに優しく本当の事を衝く人がいないとね」

「優しい本当の事?」

「小花さん。皆が褒め合う世界って楽しい?」

「楽しい気もするけど、どっか気持ち悪いかも」

「困った事に、そうした人は空気を読まない場では悪口が多い」

「摩耶さん。それはどうして?」

「上手く生きるって言う事は表の顔と裏の顔が使える人って言う事ね。
だから、猫を被る事が出来る。だけど、人としてはつまらなくなる」

「摩耶さん。どうしてつまらなくなるんですか?」

「段々、生き方を覚えてしまう。そう器用貧乏な人生」

「器用貧乏?」

「そう、小花さん。何でも出来るけど、小さく纏まって終わり」

「ぢゃあ、里瀬さんは、そうでない人って言う事ですか?」

「まあ、そうだね。不器用だけど一つの事を極めてしまう」

「でも、摩耶さん。生き方としては上手くない訳でしょう」

「そう、生き方は上手くない。

只、人とは違う世界を持っていたりするの」

「摩耶さん、人とは違う世界って?」

「1+1=2でない世界」


小花は摩耶の言ってる事が分からなかった。

1+1=2は数学の正当な解だからだった。

だから、小花は摩耶に言った。


「摩耶さん。それは変ですよ」

「小花さん。変だよね。数学的には」

「だって、絶対2ぢゃあないですか」

「それが違うの」

「ええっ、そんなの変です」

「ねえ。小花さん。平和って何だと思う?」

「戦争をしない事です」

「でも、世界中で戦争が絶えないよね」

「はい」

「それは、平和が1ではないから」

「何ですか?摩耶さん。それっ?」

「数式では1+1=2。これは間違いない訳でしょう」

「はい」

「でも、平和には色んな形があるの」

「変です。そんなの」

「人間、同じ価値観を持ってないの。神の平和を唱える人もいる。

その一方で、その神を信じない人もいる。

すると、神の平和は成立しない。

その事から導かれるのは、平和って言う言葉の概念は同じでも、

少しづつ平和のあり方が違うって言う事実。

『平和』を表す言葉は同じでも、平和Aもあれば、平和Bもある」


小花は摩耶の説明に混乱してしまった。

小花は今まで平和とかは一つだと思っていたのだ。

だけど、この世は一緒のようで一緒でないものらしい。


「うーん。分かったような分からないような」

「小花さん。人とは違う世界を持ってる人って、

その違いを指摘出来る人なの。

この世には、平和の亡霊しかいないって」

「平和の亡霊?」

「小花さん。人類は平和を唱えながら、戦争を止めた事がないの。

里瀬は真正面な子だよ。本当の事を言う。生きづらいけどね」


小花は思った。私や心音や愛華の場合はどうなんだろうか?


「摩耶さん。そう言うのって今からでも分かるんですか?」

「そうねえ。高校に入った頃から自分の道を進み出すと思う」

「摩耶さん。人って変わるんですか?」

「難しい質問ね。里瀬のように強い意志を持った人は、

核心部が変わらないけど、多くの人は流行に飲み込まれて行くわ」

「流行に飲み込まれる?」

「小花さん。ハロウィンで仮装している人、個性的に思う?」

「はい。皆、それぞれを主張していると思います」

「でも、皆、ハロウィンに参加したいから空気を読んでるだけ」

「空気を読むか・・・確かに」

「小花さん。私は個性と言うのは波に飲まれない強さだと思ってる」

「摩耶さん。それって、難しいですよね」

「うん。難しい。大衆と迎合しないから」

「大衆と迎合?」

「大衆迎合はポピュリズムって言うんだけどね」

「摩耶さん。難しくて分かんないです」

「大衆受けする手法かな。受けそうな事を選んでやってる人。

政治家とかを指す時に使われているけど、

若者の代表みたいな事をする人もね」

「受ける行動をする人いますね」

「小花さん。本当に優れた人は別の世界を見ているわ」

「別の世界?」

「深遠な世界にいる人。多くは名もなく消える」

「摩耶さん。それは、どうして?」

「中々、理解されないから。科学者や芸術家や」

「何か、損ですね」

「そうだね。小花さん。

だから、皆、安易な発想を選ぶし、同じ方向を向く」

「摩耶さん。どうしてでしょう?」

「楽だから。でも、それも生き方の一つ」


二人はそうした他愛もない会話をしながら時を費やした。

里瀬を待ちながら。


                    終わり


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四コマとも短編小説とも違ったものを書いてみました。

「里瀬を待ちながら」は現代思想による会話劇です。

面白いものではありませんが、好きな人は何度も考察してくれるでしょう。


音楽は、ミッシェル・ナイマンの、

「ピアノレッスン」~楽しみを希う心


ちいか、マヤ、お疲れ様でした。


orange pekoe  (ペコ)

2015.12.17

http://orange-pekoe.blog.jp